日本ボクシング界が生んだ最高傑作「井上尚弥(いのうえなおや)選手」がいよいよバンタム級最強を決める舞台――WBSS(ワールドボクシングスーパーシリーズ)決勝に挑む。
対戦相手はマニー・パッキャオに次ぐフィリピンの英雄であるフィリピーノ・フラッシュ(閃光)こと「Nonito Donaire(ノニト・ドネア)選手」。
ボクシングファンであれば知らない人はいないスーパースターであり、バンタム級最強を決める相手に相応しい実力と実績を持つ選手だ。
今回はそんなノニト・ドネア選手とは一体何者なのか?本当に強いのか?戦績や動画と合わせてチェックしていこう!
チェック!
- ノニト・ドネアのプロフィール・経歴
- ノニト・ドネアのヤバすぎる戦績と動画
- WBSS決勝戦「井上尚弥 VS ノニト・ドネア」の感想
- 試合後の両陣営のコメント
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ボクシング・井上尚弥と戦うノニト・ドネアのプロフィール・経歴
プロフィール
- 名前:Nonito Donaire(ノニト・ドネア)
- 生年月日:1982年11月16日
- 年齢:36歳(2019年11月現在)
- 出身地:フィリピン
- 身長:170cm
- 体重:
- リーチ:174cm
- 血液型:
井上尚弥選手と戦うノニト・ドネア選手は1982年11月16日生まれの36歳(2019年11月現在)。
アジアが生んだフィリピンの英雄・ボクシング6階級制覇王者「マニー・パッキャオ」と同じフィリピン出身。幼少期に育ったジェネラル・サントスはマニー・パッキャオの出身地でもある。
そんなノニト・ドネアは軽量級~中軽量級のボクサーでありながらボクシングの本場・アメリカを主戦場にできる、アメリカで客を呼ぶことができるレベルのボクサー。そのため日本でボクシングの試合をすることはまずないが、プライベートなどで度々来日している大の親日家。
来日時には帝拳ジムなど日本のボクシングジムに招待され、現ミドル級王者の村田諒太選手や元バンタム級王者である山中伸介さん、元スーパーフェザー級王者の内山高志さんら日本人ボクサーとも親交を深めている。
WBSS決勝で戦う井上尚弥選手もその一人であり、日本人ボクサーが憧れる選手でもある。
喘息持ちでいじめられっ子だった少年
そんなノニト・ドネア選手は小さな頃は喘息持ちで病弱。学校でいじめられては泣きながら家に帰るような少年だったそうだ。圧倒的な強さを誇るアジアのスターボクサーである現在の姿からは全く想像することも出来ないが。
この頃「自分には価値がない、生きる理由がない」と自殺を考えるほどに思い悩んでいたそうだ。
そんな状況から脱するために、兄のグレン・ドネアの足跡をたどるように、ノニト・ドネアが始めたのがボクシング。
ボクシングを始めると2人の兄弟は水を得た魚のように強くなり、様々な地域で開催されるアマチュアのボクシング大会に参加してはチャンピオンに。
2000年にはアマチュアボクシングの世界最高峰の舞台であるオリンピック出場を目指して予選会に出場。しかしながらノニト、グレン共にブライアン・ビロリア(後の2階級制覇王者)に敗れ、オリンピック出場は叶わず。
この敗戦をきっかけにプロへと転向し、アマチュア時代から1つ階級を上げてフライ級でプロボクサーとしてデビュー。
そして2007年、ノニト・ドネアの名を一躍世に知らしめる戦いがやってくる。
ボクシング・井上尚弥と戦うノニト・ドネアの強さを戦績と動画で振り返る
WBSS決勝の舞台で井上尚弥選手と戦う「ノニト・ドネア選手」は5階級制覇王者であり、45戦40勝(26KO)の華麗なる戦績を誇るプロボクサー。
しかし戦績や複数階級制覇を見ただけでは本当に強いのかはわからない。
なぜなら立派な戦績でも”かませ犬ばかりと戦って作られた戦績”に意味はないし、複数階級制覇と言っても現在ボクシング界はミニマム級からヘビー級まで17の階級に分かれ、4つの主要統括団体「WBA・WBC・IBF・WBO」ごとにチャンピオン(王者)が存在するのだから。
そのため「何階級制覇したか」や「何回防衛したのか」ではなく「誰と戦ったのか?(誰に勝ったのか)」が評価の基準となっている。
ではWBSS決勝の舞台で井上尚弥選手と戦う「ノニト・ドネア選手」は価値ある相手と戦い、勝っているのか?
彼の強さを知るために見るべき試合・動画をチェックしていこう!
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ボクサー「ノニト・ドネア」の名を一躍世に知らしめたビック・ダルチニアン戦
ノニト・ドネアを語る上で絶対に外せない試合の1つが「ビック・ダルチニアン」戦だ。
ビック・ダルチニアンと言えば当時無敗でフライ級最強候補と目されており、あの元フライ級世界王者である内藤大助さんとの統一戦も期待された選手。また元バンタム級世界王者の山中伸介選手の初防衛戦の相手でもある。
そんなビック・ダルチニアンとの試合――誰もがビック・ダルチニアンが勝つだろうと思っていた衝撃の試合がこちら。
フィリピーノ・フラッシュの異名に相応しい華麗すぎるカウンターで葬り、一躍ノニト・ドネアの名を世界のボクシング界に知らしめる試合となった。
長谷川穂積を破った「フェルナンド・モンティエル」を衝撃KO
ノニト・ドネアの数ある試合の中でビック・ダルチニアン戦と並ぶ、1,2を争うインパクトを残した試合が「フェルナンド・モンティエル」戦。
フェルナンド・モンティエルと言えば、華麗なるカウンターで数多のボクサーをリングに沈めてきた日本が誇る3階級制覇王者「長谷川穂積(はせがわほづみ)」さんと戦ったことでも知られる選手。
当時のモンティエルは長谷川穂積、ラファエル・コンセプションを早いラウンドでKOし、勢いに乗っていたボクサー。
そんなモンティエルとノニト・ドネアの試合がこちら。
モンティエルの右フックをもらいながら得意の左フックを合わせると、モンティエルは崩れるようにダウン。
意識が飛んでいると思われるモンティエルの本能がバタバタと四股を動かすこの映像は非常にインパクトがあり、ショッキングでもあった。
モンスターレフト「西岡利晃」を一蹴
日本人初のWBCダイヤモンド王座を獲得した元スーパーバンタム級世界王者「西岡利晃(にしおかとしあき)」との試合。
西岡利晃と言えばかつては”スピードキング”と呼ばれた天才ボクサー。世界王者になるのも時間の問題と思われたが、ウィラポンに4度跳ね返され、アキレス腱断裂も経験。
そのため長らく世界タイトルマッチからは離れていたが、モンスターレフトと呼ばれる強烈な左と経験を武器に、ナパーポンとの世界戦を制してスーパーバンタム級王者に輝くと敵地メキシコで行われた世界タイトルマッチで衝撃を起こす。
下馬評では圧倒的不利と言われた強敵「ジョニゴンことジョニー・ゴンサレス」を左ストレート一撃で沈め、世界を震撼させる。
またマニー・パッキャオと死闘を繰り広げたファン・マヌエル・マルケスの弟で2階級制覇王者の人気ボクサー「ラファエル・マルケス」にもラスベガスで勝利!
そしてたどり着いた舞台がノニト・ドネア戦。
はっきりいって試合としては上2つに比べて非常に退屈なもの。しかし望めば試合が組めるような相手ではないスーパースターのノニト・ドネアに日本人が初めて挑んだ記念すべき試合だ。
でも別に見なくてもいい。
WBSS(ワールドボクシングスーパーシリーズ)決勝戦「井上尚弥 VS ノニト・ドネア」の試合後の感想
KOされたことのない「ファン・カルロス・パヤノ」をファーストコンタクトでKO。ダウン経験がなく、プロ無敗の「エマヌエル・ロドリゲス」を3度倒してKO。
ボクシング漫画でさえもありえないような衝撃的な試合を世界最高峰の舞台で見せつけ、決勝戦まで駒を進めてきた井上尚弥選手。
パウンドフォーパウンド(P4P)ランキングでも上位にランキングされている日本ボクシング界が生んだ史上最高傑作だ。
パウンドフォーパウンドとは?
ボクシングは体重別に複数の階級に分かれているが、もしも同じ体重で戦った場合――全階級を通じて最も強いのは誰か?を考える方法。
対してノニト・ドネア選手はスーパーバンタム級までは誰も寄せ付けない圧倒的な強さを誇ったが、フェザー、スーパーフェザーで階級の壁にぶつかり、36歳(まもなく37歳)という年齢的にも下降線――全盛期は過ぎてしまった選手。
普通に考えれば井上尚弥選手の勝利が妥当。なんせ井上尚弥選手はあの破壊力抜群の攻撃だけでなく、防御も頭もいい選手なのだから。
ただそんな井上尚弥選手に不安要素があるとすれば耐久面で試されたことがないことだろう。怪我や減量苦によるトラブルに試合中見舞われたことはあれど、パンチによるトラブルには遭ったことがない。
ドネア選手のビッグパンチをもらったときにどう対処するのか?(打たれ強いという情報もあるが)そもそもビッグパンチに耐えられるのか?
またノニト・ドネア選手には井上尚弥選手にはない圧倒的な経験がある。それがどう左右するのか?
さぁまもなく試合開始だ!
井上尚弥 VS ノニト・ドネア戦の試合後、感想
1Rの攻防を見たとき「これは早いラウンドで井上尚弥選手が倒すかも」と思ったのだが、2Rにドネア選手の左フックがクリーンヒットし、試合の流れが一気に変わる。
試合後でも試合前のような綺麗な顔でインタビューに答える井上尚弥選手が、これまで顔に傷を負ったことがないという井上尚弥選手が右まぶたをカットして流血。更に鼻血も。
2~3R、カットで焦ってしまったのか?いつも冷静でスマートなボクシング、試合運びを見せる井上尚弥選手とは思えないようなバタバタとした雑なボクシングに不安を感じると共に右目の黒目が妙に大きくなっているのが気になる。
5R、井上尚弥選手が右ストレートをクリーンヒットさせ、ドネア選手をぐらつかせる。仕留めに掛かるがゴング。
6R以降、カットした右まぶたを気にしてか井上尚弥選手はあまり手が出ない。逆にドネア選手が打ってリズムを掴み始める。
9R、攻勢を強め始めたドネアの右が井上尚弥選手にクリーンヒット!井上尚弥選手が相手のパンチでぐらつき、自らクリンチにいくという今まで見たことがない驚愕の展開に。
恐らく多くの人が思ったのではないだろうか?「これはヤバイ、負けるかも……」と。
しかし10R、井上尚弥選手は守るどころか逆に前に出てパンチをヒットさせ、ドネア選手を苦しめる。
11R、井上尚弥選手の伝家の宝刀である左ボディがドネアに突き刺さり、ドネア選手たまらずダウン。
このとき不思議なことが起こる。
注意
ボディが効き、後ずさるドネア選手を追撃にいこうとした井上尚弥選手をなぜかレフェリーが止める。まだダウンしていないにも関わらず。
レフェリーに守られた後、少ししてからドネア選手が膝をついてダウン。カウントが進み、10カウントになるもなぜか試合続行。
ダウンから立ち上がったドネア選手を仕留めに掛かるが、仕留めきることは出来ず。
12R、お互いパンチを交換してゴング。試合終了。
結果は判定に
試合中に長谷川穂積さんが何度も言ったハイレベルな技術戦を繰り広げ、ビッグパンチも交換し合った試合。世界一を決めるに相応しい試合は判定に委ねられることに。
判定
116-111、117-109、114-113
3-0で井上尚弥選手の勝利!
初めてのトラブルを経験し、今までで一番苦しんだ試合。
人によっては底が見えた試合と言うかもしれない。スーパーバンタムやフェザーはきついと思ったかもしれない。
しかしこの試合を乗り越えたことで井上尚弥選手は更に強くなると言える試合だったと思う。
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井上尚弥 VS ノニト・ドネア、試合後の両陣営のコメント
試合後の井上尚弥のインタビュー
――これがキャリア最大の勝利と言ってもおかしくないでしょうか?
え~そうですね。ドネア選手、めちゃくちゃ強かったです。その前に皆さん、この平日木曜日にさいたまスーパーアリーナにお集まりいただき本当にありがとうございました。
――早い段階で大きなカットがありましたが、そのような逆境を乗り越えてのこの強さは驚くべきものがあったと思います。
はい、初めてのこのカットという経験。2R目から正直、あの~ドネアが2人に見えていました。え~最終ラウンドまでずっと目がぼやけた状態で、戦う中、このような結果が出せたこと、自分の最大のキャリア、誇り、また来年から精進して頑張っていきたいと思います。また皆さん応援よろしくお願いします。
――11ラウンドではダウンを奪う場面もありましたが、判定勝利にはなりましたけど、これだけの強さを見せたこと、ドネア選手の強さに驚きはありましたか?
そうですね。やっぱり、負けられないというドネアの強さ、気持ちの強さというものも正直感じましたし、え~正直自分も試合前、”世代交代”という言葉をずっと使いながら挑んできました。まだまだこんな内容じゃ世代交代と言える内容ではなかったですけど、またもっともっと練習して強い井上尚弥という姿を見せたいと思いますので、また期待してください。ありがとうございました。
――勝利おめでとうございます。
ありがとうございました。
試合後のドネアのコメント
井上はこの試合で真のチャンピオンであることを証明した。自分が戦った相手であれだけパンチを耐えられた選手はいなかった。おめでとうと言いたい
via:Yahoo!ニュース